09 韓国 日本人妻のブルース
「出演するって言ってるの。一番良さそうな番組を選んで、OKを出してちょうだい。少し準備があるから、10日目以降にスケジュールを組むように。それから、いつもの教授たちを呼んでちょうだい、今すぐに」
「は、はいっ」 (前回より)
ツルコ総裁が高熱を出して寝込んでいる間、サヨたちお付きの者は、夜中もぶっ通しで看病し、ハードなスケジュールをこなしていた。
だが今や、回復した総裁は、どこかで教授信者たちと会い、居室を留守にすることが多くなっている。
サヨはやっと少しのんびりする時間の余裕ができたので、久しぶりに姉に電話してみようと思った。
姉の加代子は数年前に教会の合同結婚式で韓国人と結婚し、ソウルの郊外に住んでいる。
「もしもし、お姉ちゃん」
「あ、サヨちゃん? ずいぶん久しぶり…元気してた?」
電話に出た加代子の声が心なし元気がないのが気になったが、挨拶を交わすうちに、元の頼りがいのあるしっかりした姉の口調に戻っていったようで、サヨは安心してしゃべりはじめた。
天聖宮殿の屋根裏を這ったことこそ言わなかったものの、最近ツルコお母様と近しく接する機会があったこと、お母様のご病気の看病などの話をした。
「そう、大変だったのね。でも快癒されたようで何よりだわ。サヨちゃんたちの心遣いのおかげね。話を聞いていると、なんだか懐かしいわ。あの職員たちの控室、よくみんなでおしゃべりしたっけ。あの頃が一番よかった…」
「うん、お姉ちゃんは、あそこの皆んなに一目置かれていたものね。知ってる? お母様は私のこと、カヨって呼んだのよ」
「やだ、うっそ〜」
「ホントだってば。私も最初は、サヨですと言って訂正したけど、お忘れになられたみたいで。私ももうどっちでもいいやって…」
2人の姉妹は声を揃えて笑った。
「あぁ、でも、韓国の先生方って、意外にいい加減で、ズルいこの世の人みたい。私、なんだかガッカリしたわ」
「あそこは、よくそういう場面にも遭遇するわね。控室で皆よく幹部先生たちの噂話や悪口言ってたわ。そうやっておしゃべりして皆で笑って……
でもね、今になって、それがいい気晴らしになってたなって思うわ。
居丈高に威張り散らす嫌な人たちがいても、直接自分には関係なかったってことよ。何よりもあの頃はまだ希望があったんだわ…」
「お姉ちゃん…」
サヨが何か言いかけた時、突然、受話器を通して、うなり声とも怒鳴り声ともつかない不快な音声が聞こえた。
途端に加代子はソワソワしたように、
「サヨちゃん、また電話するから。ごめんね」
急いで言うと、そのまま電話は切られた。
ーー家庭で何かあるのかな。
やっぱり、以前のお姉ちゃんと何か違うような…
姉の加代子は、昔から真面目で努力家、学校の成績も良く、サヨにとっては優しい自慢の姉だった。
家は貧乏だったが、奨学金を得て上位国立大学に入学し、T教会系のサークルに勧誘されて信者になった。
サヨは後に、その姉から伝道されたのだ。

***
韓国でT教会の合同結婚式に参加し、そこでマッチングされた韓国夫と家庭を持った加代子は、二重三重の抑えつけに縛(いまし)められているようなものだ。
:韓国人は清いメシアの血統だから、堕落人間の日本人より位置が上の選民であるという根深いT教会の教え。
:女は男に逆らわず、意見も言わず、男の命令に服従すべしという儒教的な男尊女卑の文化的背景。
:戦前40年以上にわたって、日本は韓国を支配統治し、韓国民を搾取虐待した罪を償わなくてはならないという歪んだ歴史認識。などなど。
夫は、加代子が誰かとおしゃべりしたり、何かに楽しそうにしていると途端に機嫌が悪くなる。
時にはほんの些細なことで、いや全く理由がないような時でも、突然大声で威嚇したり、物に当たったりし始めることがある。
教会に相談したこともあった。加代子はそこで受けたアドバイスに従って、一生懸命祈祷し、夫に従順屈服して、家事や育児や教会奉仕に努力を重ねた。
が、一向に状況は変わらず、却って夫の文句は多くなり、どこにも味方がいない弱者として下に見られ、馬鹿にされるようになった気がする。
義母にそれとなく話したこともあった。
「それぐらいは許してあげて」「怒らせるあなたも悪いわ」「根は優しい子なのよ」
こんな理解のない的外れな答えしか返ってこなかった。
DVは毎日というわけではなかったが、長い間には、加代子は、夫の機嫌が良い時でも顔色を伺い、常にビクビクするようになってしまった。
心が萎縮し、気が休まる時がない。
夫は長男ではなく、自営業の家の三男坊だが、長男二男である義兄たちの方が妻に優しい。加代子はある時、義実家で、義兄の韓国人妻が大声で文句を言い、義兄がちゃんと謝っているのを見て、自分の夫との違いに驚いたことがある。
(私が日本人妻だからかしら)
夫は実家の中ではいつまでも一番格下の扱いで、軽く見られることが嫌だった。だからT教会に金を払って結婚できたら、妻に対して徹底的に大威張りするために貶めるのだ。
末っ子だから、母親になんでも許され、甘やかされ、きちんと躾もされずに育ったらしく、やりたい放題、
生活費は月に2、3万円しかよこさない。それで食費と日用品を賄えと言う。
給料の残りは自分の酒や娯楽に使ってしまう。
加代子が作った食事には、実家の母親の料理と比べて必ず文句を付けてくる。
なぜこんなにも息苦しく、身動きならない不利な立場に沈められてしまったのだろう。
(つづく)
〜I'll Play The Blues For You〜
歌詞 日本語訳:
〜あなたのためにブルースを弾こう
もし、あなたが落ち込んでいて、本当に傷ついたと感じたら
私のいるところに来てください
あなたの孤独を癒してあげよう
あなたのためにブルースを弾くよ
怖がらないで入ってきて
昔の仲間に会えるかもしれない
君の孤独を癒してあげよう
君のためにブルースを演奏しよう
私はビッグネームでもなければビッグスターでもない
君のためにギターでブルースを弾くよ
君の孤独を癒してあげよう
君のためにブルースを弾くよ
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