07 ツルコ小説 天井裏の耳
【前回より】
ツルコの居室から階段の方向へ、2つ先の部屋がミーティング室になっている。
「そこの天井に裂け目があって、光が漏れているはずよ。
中の様子を報告して。録音してきて。失敗は許されない。
ICレコーダー、カメラ付、懐中電灯付。ほら持って。時間がない」
「えーっ」
お尻を叩かれて、カヨはハシゴを登って行くしかなかった。///////
…嫌がっていた割には、案外、スタスタと登って行くじゃないの。
若いっていいわね〜
カヨの姿は、天井の裂け目からスッと暗闇に入り、とっくに見えなくなっていた。
あたりはシーンとしている。
…ふぁあ…
ツルコはあくびをしてソファに寝そべった。
居室のある宮殿は、天正宮博物館とも呼ばれている。
高級な大理石をふんだんに使った1階ホールには、文教祖夫妻の記念の品々や往年の写真などが展示されていた。
“後世の人々は、再臨のメシア・人類の真の父母ゆかりの展示物を、神聖な物として仰ぎ見るようになるだろう。ゆえにそこは永久に万人が列を成して訪れる場所になるのであ〜る” と説教して、信者たちに高額な献金のノルマをかけ、一千億円を集めて建設した自慢の宮殿だ。
宮殿の隣りの本部ビルには、正式な会議室が複数あるのだが、こと内輪色が強い集まりには、文教祖存命の頃から、宮殿内のミーティング室がよく使われていた。
カヨがすぐに戻って来ないことからしても、今この時、幹部らはあの部屋でミーティングしているに違いないのだ。
紅葉の天正宮

ツルコは、うつらうつらしながら、頭の中で切れ切れに考えていた。
…まあ、カヨが戻ってくるまで、待つしかないわね。
…あれ、あの日本人の娘の名は、カヨじゃなかった?
…以前居たあの子の姉が「カヨ」だった気がするわ。
…じゃ、あの子の名前は何だっけ?
…まあ、呼びやすければ、何でもいいわね…
どの位の時がたったか、何か殺気立った気配を感じて、ふと我に返ると、目の前にカヨ(の妹?)が立っていた。
逆光で、一瞬その顔が不気味に映り、何か恐ろしいものが殴りかかってくる錯覚を覚えて、ハッとなった。
だが、スッと差し出されたカヨの手に握られていたのは、ICレコーダーだった。
「お母様、うまく録れたと思います」
「まあ、いきなりびっくりするじゃないの、私、殺されるかと思ったわ」
カヨは興奮しているようで、めずらしく饒舌だ。
「あの先生たち、適当ですよね。私、驚いちゃいました。それから日本のあの銃撃事件、あの後、日本でウチの評判が大変なことになっているみたいで。あの…日本の元首相が暗殺されたのはご存知ですよね。私、こちらで嫁いだ姉がそのせいで虐められていないか、すんごく心配です。それにしても、本部長や先生たち、もうお母様はただの象徴でいいだなんて… ひどいですよねー」
(やかましいわね…)
ツルコは、レコーダーの録音状態が良いことを確かめてから、カヨのおしゃべりを遮って言った。
「あら、あなた、鼻の頭が真っ黒よ。ほっぺたもだわ。
はやくシャワーを浴びてらっしゃい。もうここはいいから」
カヨは恥ずかしそうに、鼻をサッと手で隠した。
「それから、今日のことは絶対口外しないでちょうだい。
わかってるわね。では、おやすみ」
手のひらを鼻に当てたまま、彼女は部屋を飛び出していった。
一人になったツルコは、レコーダーのスイッチを入れた。
覚悟はしていたが、内容はそれ以上だった。
(つづく)
〈〈 ツルコ総裁の一族 イメージ画像 〉〉

(向かって左端の男性は誰? 元ハリウッドちょい役の権進さん? そんなに背が高いはずないか。キャットムーンとドイツ人の夫はどこ? 情進さんとウェスタン夫は? いないのか? 誉進さんの隣りの白シャツ男? ベン&インジンはすぐ分かる。前方は、お嫁さんや孫、ひ孫かな。もう知らない人が大勢です。どうでもいいんだけど)
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2023/05/11 (木) [ツルコ小説 紡ぎます]
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