02 悲しみのツルコ神学
教祖である夫が亡くなって数ヶ月後、基元節という教団の大きな行事を主宰したツルコ夫人。
その後、世界の信者たちを叱咤激励し、変わり映えしない実現不可能な高い目標とノルマを課して、一息ついた。
ソウル江南区のいつもの高級宝石店にも出入りしたが、心にポッカリあいた穴がある。
これまで表向きは、再臨主の妻そして真の母として崇められ、組織内では「真のお母様」として奉られてきた。
が、実際は「真の母は、いつでも取り替え可能だ」と夫から言われてきたのだ。
実際、取り替えられそうになったこともあったのだ。しかも何度も。
認知した婚外子、しなかった婚外子、こもごも周りにごろごろいた。
ある時、食卓の席で、息子から、お母さんよりあっちのママの方がいいよと言われたことがあった。
あれは確か、何かのことでツルコが生意気ざかりの息子をたしなめた時のことだ。
息子は「崔ママの方が優秀だよねッ、アボジ」と言って、父親の方を見た。
夫は別段否定もしなかったはずだ。その場は、ツルコだけが不機嫌に黙り込んで、何でもないように時間は流れていった。
崔ママとは一体誰を指していたのだろう。なにしろ、思い当たるだけでも夫に関わる崔姓の女は片手に余った。
ーしいていえばあの2人だわ。1人は頭脳が優秀、もう1人は家柄が上等。
ーあの時、あの子はどっちの女ことを言ったんだろう?
ー息子と夫はいつでも共謀して私を貶める…… なんで、なんで?
ーどっちの女だろう? どっち? どっち?
あの蔑みの残酷な時間を思い出すと、今でも頭がおかしくなりそうだ。
ツルコが中年期に入ってくると、教祖である夫は彼女を上げたり下げたりして操った。
狭いながらも世間の世知辛さを知ったツルコは、
教団内で祭り上げられた時は、それを利用して、長老・幹部たちを自分の味方に付けるようアメとムチを使い、取り巻きを増やした。
また、否定されて、下げられ、忍苦の中に貶められた時は、買い物三昧をした。
世界巡回講演旅行など際も、教会の金をどんどん使ってショッピング三昧だった。
ニューヨーク、ロンドン、パリ、スイス…。どこへ行っても現地の高級店で思う存分買い物をしたものだ。
しかしそれだけでは癒されないものが残った。
夫の物語の中の真の母の座、それは表面的で儚く不安定なもので、ツルコには納得できなかった。自分自身の最高の物語が欲しいと思った。
人には人それぞれの心の進化成長物語があるはずだ。
…信仰そのもののような亡き母の生涯と私が誕生した時の逸話からして、私は特別な存在のはずよ。
そう思って、以前から、教団設立神学大学の呉教授や修練院の金女霊媒師などを呼んで相談していた。
まだ2周忌前だったが、天一国2年7月1日、白亜の天正宮で開かれた訓読会において、文未亡人・ツルコ総裁は、ついに信者の前で重要なスピーチを行なった。
「皆さん、よく聞いてください。ここに座っている真の母は、6千年ぶりに誕生した神の独り娘、独生女です。証拠がちゃんとあります…」
独生女(独り娘)とは、神の独り子と称されるイエス・キリストの女性版を表す。
それは事実上、ツルコのメシア宣言である。
また、
「龍明お父様は、イエス様の使命を途中から引き継いだ代理の者だ」と宣った。
そして、ツルコ自身はあくまでもイエス・キリストの妻であり女メシアなのだと仄めかしておいた。
まだあまりはっきり言わない方がいいと教授からのアドバイスがあったからだ。
(つづく)
※ フィクションです。
※ 大変難しい修行でございます (*´-`)
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2023/02/21 (火) [ツルコ小説 紡ぎます]
以前、韓国文化にある「恨」とは、外に向かって爆発できない、内に秘めて耐え忍ぶ悲しみである、と聞いた事がありますが、ツルコ氏の根底にあるのは、まさにその「恨」だと思います。龍明氏の最大の被害者であり、最大の恩恵に浴した複雑な立場。夫の楔が解き放たれた今、遅まきながら、自分探しの旅へ出立した結論が、夫に取って代わる事であったとは、なんと哀れな到達地でしょう。ないものねだりの理想論を言えば、分裂した息子たちやメンバーが、もう一度一つのなるように働きかけ、陰から教団の復興を支える、それこそが精霊たる真の母だと思うのですが・・・。絶対無理でしょうけど(笑)
ケンタロウさん、コメントをありがとうございます。
そういう“ないものねだり”をしたくなる感覚が自然の“道理”ですよね。
私はその感覚がちょっとわからなくなっていました。理屈(思想)を先に立てて道理を見失うというか。
魂が抜けていたみたいです。7割がた抜けていたようです(笑)
だからこんなに(書くのが)くるしかったのかなあ(笑)
魂の戻し方を教えてくれる別の鶴子さん(たづこさん)(^^)
https://youtu.be/whYwQEPiVRU
そういう“ないものねだり”をしたくなる感覚が自然の“道理”ですよね。
私はその感覚がちょっとわからなくなっていました。理屈(思想)を先に立てて道理を見失うというか。
魂が抜けていたみたいです。7割がた抜けていたようです(笑)
だからこんなに(書くのが)くるしかったのかなあ(笑)
魂の戻し方を教えてくれる別の鶴子さん(たづこさん)(^^)
https://youtu.be/whYwQEPiVRU
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