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カルマの苦しみ 地獄篇/20-8

「地獄篇のはじまりー知らずに望んで地獄行き/20-7」からのつづき



   霊ノ龍明

    カルマの苦しみ

         地獄篇2




  霊ノ龍明小説 20-8


着いたそこは一大都市だったが、見渡す限り工場と倉庫ばかりの陰鬱な街だった。

工場の合間合間には、職工たちが大勢たむろしていた。
彼らはどこからともなく次から次へと湧き出て来るような具合で、働き手には事欠かない、工場をやろうという龍明にはうってつけの町のようだった。

銃の特許を持っている自信と強い意志で、工場はすぐに軌道に乗った。
各種部品から機関銃、それからバルカン砲や装甲車まで手を広げた。

総合武器製造の、泣く子も黙る「統一重工業」だ。
どんどん造って、どんどん売りさばいた……はずだった。

ある時、幹部が大慌てでやって来た。
「大変です、出荷したはずの商品が全部戻っています」
「なんだと、返品か? 取引先は何と言ってる?」
「いえ、先方は何も。いきなり、売ったはずの商品が戻って来たというか、ニョキッと出現したのですよ。倉庫にも入り切らず、工場の庭にも山盛り一杯でもう…」

その時、経理担当者が駆け込んできた。
「大変です、集金したはずの代金が消えています」
「なんだと、盗難か? 先方は何と?」
「先方は購入した製品が消えたと騒いでいますが、代金のことはあちらではどうしようもないと…」
「どういうことだ?」
「ですからあちらさんが言うことには、『統一重工業さんは特許保持の最新式の新設工場なので、ちゃんと取引が出来るかと淡い期待をしたが、やはりダメだ、この国の工場はどこもそうなんだ』そうです。『どうしようもない』と…」
「はぁ?!」
龍明は信じられなかった。

だが、大理石の壺や多宝塔を製造する石材工場の方も、同じ状況になっていた。

「と、とにかくすぐに稼働をストップさせろ。それからもっと倉庫を増やすのだ」

ところが、この国には不思議な力が働いていて、どの工場も製造を中止することができない。
ブツブツ文句を言いながらも、どうしたって働き抜かなければならないようにできている。
いくら売っても、商品はまた戻ってくる。
じゃまだからといって、煮ても焼いてもその製品はまた出現する。
だからひっきりなしに倉庫を建てている。
この町がやけに埃っぽく、倉庫ばかりが立ち並んでいるのはそのためだ。


物に依存し、製造物に囚われ、お金に振り回される住人たちの欲心の表れだ。
ここは、彼らのその霊的な発散によって作られている地獄の第三境の巨大都市だった。

龍明は霊界を下って、地獄の門をくぐり、地獄の火の壁を通過してここに来た。霊体に欲心の炎の刻印があるからもう立派な地獄の住民だ。見物人でもなく、例外もなく、逃げ隠れはできない。

この町があまりに不思議なので、通りがかりの雑貨屋に入って、店の主人に聞いてみた。
「お宅の店の商品はどこから来るのです? 工場から仕入れているのですか?」
「いいえ、これらは私と一緒に来たのです。死ぬ前も商売をやってましたから。もう見るのもウンザリなんですがね」
その時、一人の婦人が店に入って来て、帽子を買っていった。
が、数分もたたないうちに、その帽子は店の棚に舞い戻っていた。


同じ物を製造し続けるのをやめられないとは、なんと虚しいことだろう。

ーー地上では、俺は自前の武器工場を持っていたがゆえに、日本の右翼の大物でヤクザの親分、名を何と言ったか、そう、コダマヨシオやササガワさんに目をかけてもらった。
彼らにコッソリ銃を融通する代わりに、愛国青年を大勢こっちに引っ張ってこれたものだ。その頭数を餌に諜報機関や世界の政治権力にも影響力を持つことができたのだが。
いやはや、ここは、売っても、融通しても、ただ戻ってくるだけだとはなあ。
なんと虚しいことだろう。


そんなことを考えていると、2人の人物がやってきた。いい身なりをしているので、この辺の住人ではなさそうだ。よく見ると、
「あっ、きみは劉孝元の従兄弟の孝敏じゃないかっ」

「そうだよ、鋭和散弾銃の考案者の劉孝敏さ。ご無沙汰だな。あんたは私の発明を奪って特許を自分名義にしたんだよ。その後、私を工場の下っ端にして、結局いびり出したのは誰なんだよ。忘れてはいまいな!」

もう一人も劉兄弟と言われていたうちの一人で、孝敏と同じく教団の草創期に大いに貢献した人物だった。

「私も同じさ。知恵を絞って、多宝塔を発案したが、一旦販売実績が好調になると、多宝塔の製造部門をあんたの従兄弟に乗っ取られた。忘れるはずがない。私が1から育てた一信石材の収入の95%を占める多宝塔部門を、あんたが自分の身内にくれてやったんだ。みんなで支えた教会にまったく関係ないやつの名義にするとは、とんでもないことだったな!」


2人とも柔和な顔立ちの上に怒りを露わにしていた。
「私たちは、あんたが工場を始めたと噂で聞いて、遥々こんな所までやって来たんだ。同じことを繰り返さないよう、落とし前をつけてやろうとおもってな。土下座して、誠心誠意、謝れよ!」

ヒーヒー言いながらも休みなく操業するしかない中で、疲弊していた龍明は、この危機の場面でも惚けたようになっていた。

ーー地上での都合の悪い話だが、俺が力のあった頃の話だ。そうだ、あの頃はそんな影響力があったのだ。なつかしい地上の話だな…

思わずこう言った。
「いいぞ、お前たち、もっとやれ。劉孝永、孝敏、どんどん言え、好きなだけ言え。劉孝元も来るか、来るなら来い。受けて立つぞ」
「なんだとッ!」「孝元兄さんまでコケにするのかッ」

彼らは怒って、
多宝塔の先っぽで突いてきた。
銃の台尻で殴りかかってきた。
倒れた所にお壺が落とされた。
ついに散弾銃がぶっ放された。
装甲車が静かに伸して行った。

ーー虚しさと痛みではどっちがいいだろう…
思いながら、龍明は気を失った。








参考

統一教会<武器製造の歴史>(1)

https://ameblo.jp/chanu1/entry-12125608955.html





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