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元信者作家によるカルト小説「中古神学ディーラーにて」



10年献身の 元信者作家による カルト小説

「中古神学ディーラーにて」



掌編小説やエッセイがたくさん入っている本。
まだちょい読みですが。面白かったものを一つ紹介します。
翻訳ではなく、翻案というか、ネタバレありの解説・説明というか、私なりの解釈・リライトとして見てください。
(著作権があるので「翻訳」ではまずいでしょうから)


暗在自作のタイトルとリード文:
「中古神学ディーラーにて」
ー長年親しんだ愛車、黒のディバイン・プリンシプルがポンコツに?
 そこで私は、下取り中古屋へと自慢の愛車を走らせたーー



「カルト・フィクション」
ーある作家の極端な宗教をめぐる創造的な旅
K・ゴードン・ニューフェルド(著)
    

https://www.amazon.co.jp/Cult-Fiction
Kindleで買いました(日本語版なし)





 中古神学ディーラーにて 
   A Day with Dashing Dave (Short story-1986)
      K・ゴードン・ニューフェルド


私は今乗っている神学を下取りに出して、別のモデルに乗り換えようと思った。
今のモデルでもそれなりに機能するし、大体の所へは乗り入れ可能だが、修理に手間がかかり過ぎるのが欠点だ。

そこで、中古神学を扱っている店に行って、もう少しカッコ良く快適なものはないか探してみることにした。

店舗の駐車場に入ると、派手な格好をした店員が手を振りながら出迎えてくれた。

「ようこそ、当中古神学ディーラーへ。掘り出し物がたくさん用意してございます。下取りの方はお考えですか?」

私はうなづき、愛しい黒のディバイン・プリンシプル(統一原理)をなでながら言った。
「これ、いくら位になるものかな?」

店員は、わが神学をジロジロ眺め回しながら言った。
「私共はこの種のものはあまり扱わないんですがね。下取りで何台か引き取りましたが、なかなか捌けないですよ。またメンテナンスが大変でね。これは何年製ですか?」
「1976年」
「ほほう、この車種では良い年に当たりますね。では、5千円でどうでしょう」

ーそんなっ…
私は反論しようとしたが、冷静に対応することにした。
「まずは気に入ったものがあるかどうか見てみよう。下取り価格についてはそれからだ」

「はいはい、もちろんですとも。まずはいろいろご覧ください。
 お客様は輸入物がお好みで? それとも国産モデルの方が?」

「それはまだ決めていないんだ。大勢で乗れて、いろんなところに行けるような、いいファミリータイプの神学が欲しいんだ」

「それならちょうどいいのがありますよ。こちらは、古き良きアメリカの家庭用セダン、“メソジスト”です。後部座席は広々としていて、皆さんそこに座るのがお好きなんですね。
前のオーナーは日曜日にしか乗らない普通の人でした。ジョン・ウェスレー自身による取説が付いていますが、読みたくなければ読まなくても結構。メソジスト系のオーナーは、それぞれが勝手に神学を乗り回しておられるようですからね」

私は顔をしかめて、首を振った。
「いや、子供の頃、親がメソジストに乗ってたんだ。車内は退屈で、いつも後部座席で眠っていたよ。もう少しチャレンジ感のある爽快なのがいいから、これはパスだな」

「それでしたら、スポーティータイプのがありますんで。こちらへどうぞ」
と店員は案内した。
フロント部分に炎が描かれ、金属の三日月マークが付いた、車高が低い真っ赤な神学だった。

「今、中東で一番ホットなシロモノです、その名は、“シーア派”!
太く短く生きたい方のために、ボンネットの下には、爆弾やミサイルを隠すスペースをとってございます」

「いやいや。それ、チャレンジ感半端ないけど、アカンやつやろ。過酷やなあ、ちょっと難易度高すぎますよ。もっと、こう…元気の出る、ファミリータイプの良い神学はないのかい?」

「ほどほどの中間がよろしいと…そうですね、あなたにぴったりのがありますよ」
彼は、見るからに押し出しがよく、燃費の悪そうな大型モデルをジェスチャーで示した。"モルモン“だ。アメリカ製で、ボンネットの下には大きなパワーエンジンを隠してる。広々とした車内。子供用の座席もたくさんある。

「そしてこれは内緒の話なんですが…」
と、店員は身を乗り出し、私の耳のそばに手を当ててささやいた。
「実はこのメーカーさんはですね、これであなたを他の惑星に連れて行き、あなた自身が神になれると主張しているんですよ」

「待ってくれ。いや、悪くはないが、メーカーがそんな乱暴な主張をする神学を信用できるとは思えない。もっと理性的で信頼できるものに乗りたいね」

「合理的なのがよろしいのですね。理性的…承知しました」


次に彼が案内してくれたのは、内装に装飾が施されたとても美しいモデルだった。
複雑な彫刻が施された豪華なダークウッドのシートが、煌びやかに輝き、ダッシュボードに並べられたキャンドルの灯火。“ザ・カトリック” だ。
「後部にはトマス・アクィナスの文書録が備え付けてございます。
 2,000年も前から製造されていますんで、信頼性は高いですが、故障すると修理が大変ではあります。かなり神秘的な方法を用いますからね」

「ふむふむ。面白いけど、私の好みからするとちょっと派手すぎるな。もっとシンプルな神学がいいね。そうすれば、故障したときに簡単に修理できるし」

「お客さん、こういうのはね、“あちらを立てればこちらが立たず”ですよ。
神学がシンプルであればあるほど、理に適わなくなる傾向があるんです。
例えば ここにある “福音派“ モデルなどですと、修理は簡単で 1日に4〜5リットルの "主を誉め讃えよ "を補給してやればすぐに機嫌を直します。
が、科学的証拠の森の中や、現象学的推論の裏道を走らせようとすると、仁王立ちになってドスンドスンと跳ね回り、全速力でアサッテの方向へすっ飛んで行きます。そうなると誰も止めることはできません」

私が押し黙っていると、店員はまた少し考えて言った。
「そうだ、お客さんなんかは意外とこういったものがいいのかもしれません。“仏教”を運転してみてはいかがでしょう? お経を唱えないと動かないのが先週入ったんですよ」
「オキョウ?」

「お経、念仏、お題目といってもいいですが、たとえば、“ナンミョウ ホーレン ゲーキョウ "と唱えるだけで、動き出すんです。とてもシンプルですが、やはり論理的フィールドではあまり優れません」


私はしばらく考え込んだが、結局、乗り換えるのはやめようと思った。
「悪いけど、見たところ、私が乗っているものよりずっと良いと言えるものはなさそうだ。だからまあ、手間はかかるけどしばらくこのまま使い続けてもいいんじゃないかと思うんです」

店員は肩をすくめた。
「残念ですが、ご自由に。そういえば、お客さん、プリンシプルのドライバーは、3万マイルごとに脳を洗わなければならないという噂を聞きますが、本当ですかい? へへっ」

「いいや。でもそれは効くよ。じゃまたね、いろいろありがとう」


そういうわけで、私はこのまま古い黒のディバイン・プリンシプルを 運転することにした。
時にエンストしたり、プスプスと曇った気炎を吐くポンコツだが、基本的にすべてのパーツがかみ合っているんだ。

でも、そのうち別の神学に挑戦したくなったら、これをぶっ壊して、スペアパーツで新しいものを自分で作ろうと思う。
そんなにいいものにはならないかもしれないけど、多くの人が最近乗っているモデルよりは悪くないんじゃないか。
   end




【暗在感想】

アイディア一番勝負。面白かった。

作中にあるように、モルモン教の教祖は、そのうち別の星に行って創造主になれるとか、昨今の陰謀論で言うようなことを当時から奥義として開陳していたのだろうか、本当に? などと宗教オタクっぽいことはいいとして。

「融通の効かない原理からファミリータイプに乗り換えたい」なら、
「こちらのFFWPU(家庭連合)はいかが?」としたいところですが、
この短編は、1986年の作とのことで、当該新型モデルはまだ発売前。

逆に、その時期にこういったアイディアを出したとは、著者は先見の明があったというべきか。
とまれ86年は、著者が脱会したばかりの年で、35年も前のこと。
最近ではどんな考えをしているのだろう。


今年になって、元信者のインタビュアーが、著者ニューフェルド氏にインタビューした記事から抜粋翻訳します。


https://medium.com/seven-questions/cult-fiction-writing-and-healing-seven-questions-for-kenneth-gordon-neufeld-9a0568cd9743
〈ゴードン・ニューフェルドへの7つの質問〉

インタビュアー:
5. あなたの著書『傷心と憤怒』の初版(2002)以来、統一教会では様々な変化が起きています。
文鮮明は地上天国を実現することなく2012年に亡くなり、娘の文仁進は祝福を「制度的レイプ」と言い、息子の文亨進は独自の教団を立ち上げて最近議事堂暴動に関わり、不倫で生まれた息子のサム・パクは亡父に反論しています。
このようないくつかの変化と、今日の統一運動組織の変化について、あなたはどのようにお考えですか?

ニューフェルド:
文鮮明の死は、今にして思えば予想通りの結果をもたらしました。
それは、運動が幾つかの争いの火種となって砕けたことです。
現在、教会には3つの主要な派閥があり、それぞれが、私が1976年に入会した教会とは似ても似つかないものになっています。
長い時間がかかるだろうが、これらの派閥は次第に表舞台から姿を消し、文の壮大なビジョンにもかかわらず、地上の天国を作るための努力は、長い目で見ると何も残らないだろう。

  

やっぱり先見の明があるように思います。(^.^)






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