「界劣等生?やり直したいと言う困ったちゃん/20-2」からの続き
霊ノ龍明、
霊界伝道、始まる…が…
霊ノ龍明小説 20-3
教師も龍明もパッと消え、大教室はシンと静まり返った。(前回より)
龍明は、それから1、2回霊界授業に出たが、らちが明かず、そのままばっくれてしまった。
ーよし、伝道の旅に出よう。
霊界学校の宿舎から走り出て、着の身着のまま、でたらめな方向にどんどん歩いて行った。
が、草原のような風景が果てしなく続くだけで、人っ子ひとり見かけない。
ーとにかく、霊人が住んでいる場所に行きたいものだ。
すると景色が変わり、彼は、灰色の石の谷のような所にいて、
暮れ色のぼんやりとした空の下、寒々しい岩石の丘に周囲を囲まれていた。
そこは草一本生えておらず、灰色の石があるのみの冷たく寂しい印象の場所だが、石窟のあちこちで人影が動いていた。
たしかに、住んでいる霊たちがいるようだった。
だが彼らに「こんにちは」と挨拶しても、「ここはどんなところですか?」と話しかけてみても、龍明の姿が見えているのかいないのか、何の反応もなく、誰ひとり答える者はいなかった。
その谷に住む者たちは、あまりにも自己中心的に心を閉ざし、自分以外のものを見る力さえ喪失しているようだった。
龍明は荒凉とした灰色の谷を歩きながら思った。
ーここは無理だな。もっと、こう… 普通の町はないものか。
すると、瞬く間に石の丘を越え、わずかながら植物や灌木が見られる乾いた感じの広大な土地が現れた。
そこらは地表の霊界のすぐ上、つまり精霊界では下層にあたる国々の入り口で、そこの住人の多くは、地上生活を終えて間もない者たちだった。
そこここに形成された町や市は荒れて醜く、ここもまた自己中心と貪欲が支配する場所のようだったが、先ほどの灰色の谷のように完璧に他人の心に対して無関心というほどひどい状態ではないらしい。
ここの住人たちはよく口論したり喧嘩をしたり、不平不満を言ったりしていたが、周囲の者たちにいくらかは仲間意識を持とうとしているように見えた。
霊ノ龍明は町に入り、いくつもある空き家のうち、見てくれは大きくて立派、だが中は荒廃した石造りの館に居を定め、そこで教会を立ち上げた。
「天国建設」「原罪から脱却」「為に生きる」を掲げ、自分は神が送った救い主・メシアであり、特別な最重要人物であると匂わせた。
ある時、みすぼらしい不快な顔つきをした浮浪者のような者たちが数人、「牧師先生の話を聞きたい」とやって来て、挨拶もそこそこに、
「私たちは不当な待遇を受けています!」
とまくしたてはじめた。
聞いてみると、彼らは地上では贅沢な生活を思うままに享受してきた最も裕福な人々であったり、流行の先端を行く生活を送ってきた著名な人たちらしかった。
「こんな場所に連れられて来るなんて、とんでもないことです」
と口々に言い、同じそこの住人を見れば自分たちよりずっとひどい人間どもなのにと非難がなかなか止まらない。
「まあまあ…ここでそんなことを言われても困りますが、」
と龍明は彼らをなだめて言った。
「あなた方は地上で、為に生きなかったのではないですか? “為に生きる”は神への道であり、天国の喜びです」
すると彼らは、言い訳や口実をひとしきり並べ立てていたが、
そのうち一人が、「先生、ではどうしたらいいのですか」と聞いてきた。
龍明は答えた。
「うむ、まずは祈ることだな。“為に生きる天国の喜びを我に与えてください”と天に祈ってみなさい」
彼らは祈ってみた。
すると、遠く生暖かい目で彼らを見守っていた、上の境涯にいる守護霊や指導霊の繋がりで、天使たちが、そんなに願うならと、天界の喜びを少しばかり彼らに注ぎ入れてあげた。
天界の喜びが分け与えられると、彼らは苦しみはじめ、苦痛のあまり身をよじらせた。自己愛や享楽は、天界の喜びとは正反対なので、こうした苦しみが生じる。
「ワァ〜〜ッ」「ギャ〜〜ッ」
彼らは叫び出し、頭を膝にくっ付けたり、反り返ったりした。
そして外に飛び出しては、地べたに身を投げ出して、蛇のようにトグロを巻いたりした。
「くっ苦しい、先生、なんとかしてくださいっ」
騒ぎを聞きつけ、人々が集まってきた。
龍明は慌てたように、苦しむ彼らに言った。
「た、為に生きなさい。それを喜びとしなさい」
彼らはのたうち、口々に叫んだ。
「だから〜 先生の言う通り、そうしようとしてこうなったんでしょ!」
「どうしたらいいんだ?教えてくれ」「ヒィ〜ッ 助けて!」
「だ、だから、おまえたちには訓練が必要だ」
龍明は口ごもりながらも威厳を保つように言った。
「ヒィヒィ、どんな?」
「だから、為に生きる訓練だ」
「だから、ヒィヒィ、どんな?」
「うむ…腹が減っている者にご飯を食べさせてあげるとかだ」
そこで見物人の1人がこう言った。
「ここでは、そんなもの 食べたいと思えば、いつでもパッと出てくるが、いくら食べても満たされず、ますます飢え渇いてくるような気分だぜ。そんなはかない罪なものを人にやろうだなんて奴は、まるでバカですぜ、牧師先生?」
野次馬たちはゲラゲラと笑った。
為す術もない龍明は、恥をかくばかりだった。
***
誰が言ったか知らないが、その国は “不安の国”と呼ばれている。
精霊界の最下層、仄暗いたそがれ色の光が差すこの一帯、
不安の国の隣りにある国は、“守銭奴の国”。その奥が “不幸の国”。
地獄のようで地獄でない。人間らしさが残っているということだ。
参考:
●天使から天界の喜びを分け与えられた霊が苦しむ話は、
スウェーデンボルグ『天界と地獄』を参考
●仄暗い領域の「不安の国」「守銭奴の国」等については、
A・ファーニス 『スピリットランド 』を参考
※記事中の、天使から天界の喜びを分け与えられて霊が苦しむエピソードは、統一教会が言葉だけで、それぞれの段階に合った実質の修行法がなく、人が徒(いたず)らに苦しめられる(ことがある)ことを表したかったのであって、
堕落性が強く基準が低い霊だから強烈に苦しくなったのだという裁きのつもりは全くございませんので、呉々もそのような統一教会風裁きのように読み取らないようお願いします。
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2022/01/28 (金) [霊の龍明小説 20 ]
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