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龍明小説1&2の記事 (1/1)

どこにでもいるタイプではなかったようで/龍明小説1-1

 龍明小説1-1

 ノ龍明は、1920年、朝鮮半島北部の寒村で、子だくさん農家の次男坊として生まれた。
 幼い頃、よく1人で裏山に分け入り、森の木々や小動物たちと思う存分戯れて過ごした。8才頃から村の賭博場に出入りし、12、3才まで大人たちを集めて博打場を仕切った。父の牛の売上金をタンスから持ち出し、花札の胴元になって、大金を儲けたり失なったり。勝つと時々人助けらしきこともする、性格の激しいガキ大将だった。

 喧嘩っ早くて強情で屁理屈がうまく、「牛を殺す」と言えば殺し、「火を放つ」と言えば放つ、有言実行。気に入らないことがあると一日中大声で泣き喚くので、大人たちは手を焼いた。親戚からは「あいつは王でなければ逆賊にしかなりえない」と言われ、その極端な言われようが自分でも気に入っていた。

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神霊集団 カッコいいのか、だらしないのか/龍明小説1-2

『龍明小説1-1』からの続きです。


龍明小説1-2

 
 そのころ朝鮮では、後にキリスト教主流派から異端認定をくらう 神霊集団が起こって話題となっていた。
 きっかけとなったのは、メソジスト派の復興師、イヨンド牧師だ。彼は数年後に33歳で早世するが、多才で感受性豊か、普段は無口だが、復興師として集会に招かれると、聖霊が臨んだかのように熱狂的に説いて叫んだ。

 「主の愛に飲み込まれよ! 
 さすれば合一の原理によって
 主は汝の信仰に飲み込まれる!
 主と血が混ざり合うのだ! 
 神と愛で融け合うのだ!」 
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マジ卍エピソード 本邦初公開/龍明小説1ー3

『龍明小説1ー2』からの続きです。


龍明小説1ー3


 十代後半で普通学校を終えた龍明は、京城(ソウル)にある商工実務学校に通うために上京し下宿生活を始めた。
ソウルには漢江という大河が町を横切るように流れている。暖かくなると毎日のようにそこへ泳ぎに行った。橋の下には乞食や極貧家族が住んでいたが、時々ハサミを持って行って彼らの髪の毛を刈ってやった。

 2年目の夏のこと、同じ学校に入学し同じ下宿に住むようになったいとこのセギョンがマラリアにかかり、2週間の間、昼になると必ず高熱が出た。
 ある暑い日、龍明はそんないとこの部屋へ行ってこう誘った。
「よぅ、川へ泳ぎに行こうぜ」
「ムリだよ、熱があるんだ」
いとこは力なく応えた。
「俺は治し方を知ってるんだよ」
龍明は堂々と言い放った。1人で泳ぎに行きたくなかった。

「え、そうなの?」
「そうだよ、それは君の心の持ち方によるんだ。一緒に来れば教えてやるよ」
そしていとこを漢江のほとりまで連れて行き、言った。
「さあ、服を脱いで川に飛び込め」
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秘められた血分けへの誘(いざな)い/龍明小説1ー4

龍明小説1ー3からの続きです。


龍明小説1ー4

 縁あって龍明は、かの神霊教団の1つ、新イエス教会の学生メンバーになった。イヨンド(李龍道)系統のイエス教会の集会は、神秘に没入し現実世界も手に入れたい野心ある龍明の気質に合っていた。若く血の気が多い彼は、主との血の混合を説くイエス教会の汎性欲主義的な愛の原理に捕らわれてしまった。


 漢江のほとり、明水台にあるイエス教会に足繁く通い、子供たちが集う日曜学校の先生役を務めるようになった。礼拝では大勢の年長の信徒たちの前で立ち上がり、涙に咽ぶ熱烈な代表祈祷をして、婦人信者を感動させた。

 祈祷が終わった時、1人の感極まった婦人が駆け寄って来て彼をハグした。ぷよぷよした肉厚の腕でぎゅーと抱きしめてきて、ウチに下宿しなさいよと誘った。
 ソウル上京後3年目のこと、彼は下宿先をそのリー夫人の家へ移した。資産家らしい立派な家で、十代の娘が2人いた。
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文ノ青少年、妄想爆発/龍明小説1ー5

『龍明小説1ー4』からの続きです。


龍明小説1ー5


 龍明は興味津々だった。啓示で指名される人はいわば神に選ばれし者だ。ぼくが選ばれないはずがない、と思った。

 ——そりゃぼくは普段はそんなに祈らないし、俗な場所にもよく出かけるが、秘密兵器がある。代表祈祷で熱烈に祈ったんだ。「神よ、我に、ソロモン王より大きな知恵を与えたまえ」と叫び、次は「使徒パウロよりも強い信仰を与えたまえ!」だ。最後の極めつけは「イエス・キリストよりも偉大な愛を持つ者にし、このかわいそうな国を救う者にしてください!」とやって、婦人たちをオンオン泣かせた男だぞ。熱祷少年だ。泣きの熱祷だ。神がいるなら目に留めないはずがないんだよ。


 自分が選ばれない気がまったくしないのだった。


 龍明が生まれた朝鮮は何百年も中国(清)の属国だった過去を持つ。日清戦争後は属国ではなくなったものの、自立を保てず、海を隔てた隣国日本に保護を求めて合邦になった。

 近代国家としての条件と内容がまるでない非独立地域であり、内情は貧しく民度は悲惨だったが、イエス教会では朝鮮人の再臨主によって全人類は完全に救われると説く。そして朝鮮は全世界に崇敬される魂の宗主国となると言うのだ。龍明は血が熱くなる思いがした。
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ショボッ龍明の青春一巻の終り悲しくてやりきれない/龍明小説1ー6

『龍明小説1-5』からのつづき


龍明小説1ー6

 しかしいつまでたっても、彼に関する神の啓示はどこからも聞こえてこなかった。一介の学生メンバーに過ぎないのだから当然だった。

 そこで自分でおばさんを説得しようと試みた。さすがの彼も、
「あなたはぼくと性関係を結ばなければならない」などと直裁的には言えない。
それで曖昧な信仰の話のようになった。当然彼女には伝わらない。
「そうよ、私はイエス様の再臨を本当に待ち望んでいるわ。もちろん受け入れるわよ。あなたもそうでしょ、会えるといいわね」
などと言うばかりだった。龍明は癇癪を起こして叫んだ。
「ぼくとイエス様とどちらが偉いか祈ってみろよ!」

 それからもおばさんは彼を自分の息子のように扱うだけだった。

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詐称して見合いしてその晩致しましたハイ/龍明小説2ー1

『龍明小説1ー6』からの続き



龍明小説2ー1



 1941年、21歳で東京にある専門学校に留学した。

 2年半して帰国、そろそろ身を固める時期だと感じ、仲介してくれる人を見つけて、紹介された女性の家にお見合いに行った。

 将来は満州辺りで職を得て、機を見て独立し、何か世界を驚かせるようなドデカい事業に打って出たい、そんなことをしゃべりながら、お見合いを10回以上繰り返したが結局話は決まらなかった。

 学歴経歴がパッとしないわりに極端に大きなことを語る龍明は、お見合いの席では概して評判が良くなかった。その頃はイケメンだったのに(!)ほとんど相手側から断られてしまった。

 なんとかしなければいけないと彼は思った。

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鬼畜お花畑の龍明と可愛いサンキルちゃん/龍明小説2ー2

 
『龍明小説2ー1』からの続き 


龍明小説2ー2



 サンキルが自分にゾッコンになったと見て取るや、龍明はさっさと帰途についた。

 それから昨今の内外の政情から国内にいた方がいいと判断し、満州をあきらめそのままソウルで電気技師として職に就いた。

 そうこうしているうちに、2ヶ月3ヶ月が過ぎていった。ある時、サンキルの実家がある村に住んでいる親戚がやって来てこう言った。

「おい、崔家では大変なことになっているぞ。娘がどうしてもあんたでないと結婚しないと言い張ってな、大暴れして、ほかの見合いを全部突っぱねて、両親はカンカンになって、村中に飛び火して大騒ぎしてるんだ。わしら迷惑を被っとるよ。あんた、一体どうする気だね」

龍明はモテる男はつらいよと言わんばかりにうそぶいた。
「へえ、そいつは驚いたな。僕はどっちでもいいと思っていたんだが‥‥いやまいったな」


 そうは言ったものの、さっそく次の休日に大威張りで崔家に出かけて行って、結婚の話を本決まりにして来た。

 そして職場の近くに台所と一間だけの小さな家を借りると、見合いの翌年春に結婚式を挙げ、龍明24才、サンキル21才、ママゴトのような新婚生活を始めることになった。
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龍明がやらかした? 謎の女ウリョン登場/龍明小説2ー3

『龍明小説2ー2』からの続き



龍明小説2ー3



そんな頃のことだ。
「あっ、ウリョン!」
 町で、イエス教会時代のガールフレンド朴ウリョンにばったり出くわした。

 思わずたじろぐ龍明に,
「あらッ 」と彼女は言って、特徴ある頬を膨らませ、意外にも屈託なく話しかけてきた。
「龍明さん、うわさはリー夫人から聞いてるわよ、結婚したんですって。住所も教えてもらったから、そのうち訪ねてみようかと思っていたわ」

「え、か、帰ってたのか。日本にいるとばかり思っていたよ」
「いやねえ、もう何年たってると思ってるの?」


 ソウル商工学校時代にイエス教会の学生部で知り合ったウリョンは、龍明と同じ時期に女学校を卒業し、日本に語学留学しようとしていた。

 当時リー夫人母娘への独りよがりな邪恋に破れた龍明は、その悔しさを挽回すべく、日程の隙をついてウリョンに急接近した。3月31日、2人で示し合わせて、釜山港から同じ時刻、同じ船に乗り込んで、一緒に東京に向かった仲だった。


 東京でも喫茶店などでよくデートした。映画館にも行った。夜中に彼の部屋に突進したこともあった。いつも仕送りが足りないとぼやく彼の部屋の引き出しに、毎月こっそり金入りの封筒を忍ばせたのも彼女だった。龍明の甘言にのぼせていたのだ。
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大先生の御言葉とクリスチャン青年の躓き/龍明小説2ー4

『龍明小説2-3』からの続き


龍明小説2-4



 「君たち、先生(=自分のこと)はね、若い頃はいろいろ研究したや。
 それで、最高の美女がベッドの中で誘惑して来ても、自分をコントロールする訓練を受けたんだね。

 まさにセックスしようとしているその時ですら、ふいと横を向いてやめることができる。
 先生は誘惑を取り扱う世界チャンピオンだと言うんだね。

 あー、ある晩寝ていると一人の女が裸で入ってきた。
 先生の布団を捲って、『私を救ってください』と言う。
 先生は不能者だからと言って断った。

 すると女は、『あなたは男じゃないの?』と言って先生を立たせようといろいろやったが、先生は自分を立たせなかった。

 そんなことをしたら神様の生殖器をゴミ箱の中に投げ捨てることになると知っていたので、できなかったのです。

 どや、先生はアホな者ではありまっせん。」

              *
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おら こんなメシア 嫌だ〜 USA!/龍明小説2ー5

『龍明小説2-4』からの続き



龍明小説2ー5



 実は文ノ龍明のこのスピーチはある種の釈明会見のようなものだった。


 文ノ教会に近い人が暴露本を出し、その中に龍明教祖の数多の不適切な性(血分け)のスキャンダルも含まれていた。全米の人気テレビ番組にも取り上げられ、複数の証人が出演してインタビューを受けた。


 その番組の放映後まもなく、全米各地から信者を集めて、緊急集会をニューヨーク郊外の大邸宅で開いた、そこでのスピーチだった。普段言わなくてもいいことまで言ってケムに巻き、多くの信者は納得できないままの、釈明にならない誤魔化しピーチになった。


 そこに参加した代々カトリック出身のイタリア系まじめ信者青年の抱いた感想は、いよいよ佳境に入り、恐ろしい最後の審判に近づいた。


---- 文ノ氏は神とイエス・キリストにしがみつく代わりに、サタンにうんと近づいて行ったので、サタンが彼を誘導せざるを得なかったんだ。
 サタンが文ノ氏に完全勝利した証拠がある。
 それは何か? 
 “摂理的不倫”さ。
 暴露されたように、神の聖なる摂理という名目の不義・不倫だよ!
  “堕落を元返し回復するために堕落しなくてはならない” と文ノ氏に信じ込ませたのは、サタンだ! 

                *
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イスラエル修道院の銀白文ですヨロシク/龍明小説2-6

『龍明小説2-5』からの続き



龍明小説2-6



 さんざんウリョンを弄び、振り回しておきながら、戦時繰り上げだと言ってそそくさと卒業し、先に帰国してしまった龍明。

 なのに学徒出陣もせず、さっさと別の女と結婚してしまった龍明を、事実上恋人だったウリョンが恨んでいても不思議はない。

 が、彼女はそんなそぶりは全く見せず、こう言い出した。
「あなたに紹介したいすばらしい牧師先生がいるのよ。銀白文先生といってね、」

 イエス教会設立時の中核幹部 白南柱の高弟で、医学部を中退して神学校に行ったという人物だ。頭脳明晰、学究肌、信仰篤実、高い人格で定評があった。その銀師が最近程近くに小さな修道所を開設し、講義を始めたのだという。

「小規模だけど、イエス教会の中でも影響力のある人や熱心な探求者が集まっているわ」
もちろん彼女自身も参加していると言う。


 ずいぶん銀牧師にご執心な様子だ。どうやらウリョンは銀牧師の説くみことばで救いを得たらしい。
 日本留学時代のボロボロになった彼女を見ている龍明は、自分がボロボロにしたのも忘れて、結構なことじゃないかと鷹揚に構えた。

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妻サンキルがアカン化した。トホホby龍明/小説2-7

『龍明小説2-6』からの続き



   龍明小説2-7



 銀白文師の教会の信者の中には、新聞社「朝鮮日報」の社主の奥方や、後に首相になる有力な政治家の夫人や娘などもいた。


 師はソウル都市部にあるイスラエル・イエス教会で週1回説教をし、50〜60人程が集まっていたが、イスラエル修道院の方は郊外の片田舎、屋根に十字架をちょこんとつけた古い質素な家屋で、十数人が信仰生活をしていた。


 住み込みの献身修道者がほとんどだったが、妻帯者の龍明はウリョンの口利きもあって、仕事の合間に通う聴講生として受け入れてもらった。


 最初のうちはパートの新入りのような身分をわきまえて、掃除などの地味な僕仕事をよくこなした。そして銀師のキリスト教原理の講義を聴講した。それは新イエス教会の教理を受け継いで発展させたものだった。


 講義が終わると龍明は、聖書の内容について、インテリ宗教者には思いつかないユニークな質問を繰り出した。ある礼拝時には銀牧師が龍明の頭に手を置いて「この者はソロモンの知恵を持っている」と祝福の言葉を与えてくれたこともあった。


 龍明は気分を良くして、イスラエルのソロモン王からの血統が俺に繋がっているんじゃないかと本気で思った。
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龍明家庭に献金問題勃発!銀色講義/小説2-8

『龍明小説2-7』からの続き




龍明小説2-8



 イスラエル修道院の修道生は男が2人、女が10人で女の方が圧倒的に多かったが、ある時そのうちの一人から声をかけられた。

「ちょっとあんた、給料を丸ごと銀先生に渡そうとしたんだって?」
龍明が立ち止まると、別の女が言った。
「もうすぐ赤ん坊が生まれるのにって、奥さんが怒ってたわよ」

 すると誰かが、モノマネのつもりか裏声で変な節をつけた。
「イヤだわ、アナタ、それじゃ食べていけないわぁーん」
ドッと笑い声が起こった。
「それで今月の献金は、」
「ゼロかい」
「ゼロなのかい?」

 いつの間にか女たちに取り囲まれていた。
「こちとら、それじゃ困るんだよ、ねえ」
「ああ、それじゃ天下の銀サマがおビンボさんになっちまうよ」

また変な裏声が響く。
「イヤだわ、あなた、ウチらやっていけないわーぁん」

「よう、あんた」
「しっかりおしよ」
 女たちは口々に彼をからかって、笑い転げた。
 ウリョンが遠まきに、大口を開けて笑っているのが見えた。


 どうやらサンキルは1ヶ月の間に知り合った女修道者たちと時々どこかで井戸端会議でもして、龍明との生活の鬱憤をぶちまけているらしかった。

 その度に女たちは、朝鮮らしくズンドコベロンチョに混ぜッ返して、龍明をなじりからかった。彼は何度も小っ恥ずかしい目に合った。


 後に彼女らはサンキルに知り合いの産婆を紹介し、お産の時には押しかけて来て、いろいろ手伝ってもくれた。

                *
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先生はフラれたんだね。どいてよ馬鹿ッ/龍明小説2-9

『龍明小説2-8』からの続き




 龍明小説2-9




 また銀師は、イエス教会の白南柱師匠に倣って、歴史を旧約時代、新約時代、成約時代の3つに区分し、こう語る。
 モーセの旧約時代には、堕落を贖罪する儀式として「割礼」があり、イエスの新約時代には「洗礼」があった。
 最後の成約時代にも割礼や洗礼に相当する絶対的儀式が必要である。
 それを「体礼」と呼ぶことにする。それは神の聖愛を実際に体験して、肉欲を聖化する儀礼である。
 聖書の言葉も頻繁に引用しながら、講義は続く。


 情欲を神の聖愛で聖化するために必要だという、体で体験する儀式「体礼」、それはすなわち……‥ 龍明はピンときた。 
 それは理論化された血分けにほかならない。


 「ウリョン、朴ウリョンはどこだ!?」
すぐウリョンを探し出し、修道院の廊下の隅で問い詰めた。

「きみは銀先生から体礼を受けたんだろう?」
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頭突きと足蹴りで修道院をぶっ壊す!撃沈/龍明小説2-10

『龍明小説2-9』からの続き



    龍明小説2-10




(くそっ 銀とウリョンのやつめ!)
 あとに残された龍明は、1人廊下に立たされた生徒のように屈辱的な気分だった。


(このままで終わってたまるか。今に見てろよ!)
 思いっきり斜め右前方の壁に突進し、頭突きをくらわした。
 べコッと変な音がして、イスラエル修道院の廊下の壁板が裂けてへこんだ。


 その後イスラエル・イエス教会の方で伝道集会に参加する機会があった。
 その祈祷会の最中に、彼は自らの祈りの世界に入り込み霊的になって勢いをつけ、日頃の鬱憤を晴らすべく思いっきり礼拝堂の壁を足で蹴っ飛ばした。


 若い頃はよく山や自然の中に行き、そこで大声を出し、力いっぱい樹木を叩いたり蹴ったり、格闘しながら祈ったものだった。
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元祖 原理青年 銀白文・真面目な方クリック/龍明小説2-11

『龍明小説2-10』からの続き



龍明小説2-11


             *

 騒ぎが起こってざわついていた聖堂が、自分の二言三言でサーッと静まっていくのは気持ちがよかった。特に最近荒れていると他の修道生から苦情が来ていた聴講生、あの、熱心だが不可解なところのある青年が急におとなしくなった時は妙な快感があったのだ。


 それに気を良くしたからでもなかろうが、銀牧師はいつになく饒舌だった。祈祷会の後にも講話が続いた。

「皆さんもよくご存知だと思いますが、ここ10年ほどは、朝鮮のクリスチャンたちの中で、霊的な運動が広がった時期でした。

何千人もの人々が霊示を受けて、誰も理解できない異言を語りはじめたり、伝道集会中には、大勢の参加者が酩酊したかのように有頂天になりました。

ではその現象は人々にどんな影響をもたらしたのでしょうか。
それは人々に役立つには程遠いものだったと言わざるを得ません。

実際、多くの信徒たちが不道徳な行為に導かれてゆき、結局は彼らの信仰生活をめちゃくちゃにしてしまったのです。

なぜ聖霊がこのように来るのか、私は疑問に思いました。
それがそのような破壊をもたらすとしたら、その目的は何だったのだろう?

多くの祈祷の後に、私は答えを受け取りました。


「聖霊は人々の感覚を興奮させるために来るのではありません。
人々の魂を清め、主の道を準備するために来るのです。

しかし何より重要なことは、神が1人の人を見つけ出したいがために、聖霊は来るのです。
神の王国をもたらすために、神は新しいアダムのようなその1人の人を起点として出発する必要があるのです。

聖霊がやってくる背後の目的は、1人の完全な人を作り遣わすことなのです!
聖霊が降り注ぐこの朝鮮、我らの祖国は、神によって選ばれた現代のイスラエルであります!
この地で、キリストの再臨が起こるのです!」
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啓示を狙う啓示泥棒。細目横目の男に注意/龍明小説2-12

『龍明小説2-11』からの続き



龍明小説2-12




 この時期、銀白文は油がのっていた。信者たちの間に何かわからない期待感が高まりつつあった。

 そしてついにある現象が起こった。篤実な信徒33人が参加する野外集会の最中に聖霊が降臨し、銀牧師の所にイエス・キリストが現れたというのだ。


 その時から銀師は、朝鮮を新しく神に選ばれた国として、その明白な役割について一連の啓示を受けはじめた。
「あなたはイスラエルである」との御託宣が下ったので、それは何を意味するのか神に尋ねたところ、「あなたは将来、新しい教えを世界中に広める使命がある」との答えを受け取ったという。


 彼は後に著書でこう説明している。
『1946年3月2日、朝鮮の京畿道のガンサン山で、11時23分から12時まで、私は直接姿を現したイエス・キリストに会いました。そしてイエス様の前で、キリスト教根本原理の本を書くことを約束しました。』


 銀白文師が啓示を受けた、イエス・キリストから使命を託されたという話が広まるに連れて、再臨の主は彼ではないかと周囲でささやかれるようになった。とりわけ信者たちは、師が再臨のメシアだと信じ始めた。

 それによっていかに人々が彼を畏敬し、屈服するようになったか。師の言うことを簡単に信じ、従うようになっていったか。こうも違うものかと龍明は内心驚きながら、横目でジッと見ていた。


 啓示の話で銀牧師の元に集まってきたのは、人々の崇敬・屈服の念だけではなかった。金銭に関してもそうだった。献金や献品が明らかに増えたのだ。

 ある婦人信者の政治家の夫が首相になり、彼に献品したものがすごかった。敗戦で撤退した日本の残留資産である、石鹸香水製造の仁川エギョン社が工場もろとも銀師に譲渡され、その利益はイスラエル修道院の資金になった。


ー啓示の証があるのとないのでは、こうも結果が違うものなのか。
 龍明は、エンピツを舐め舐めいろいろ書き留めて、将来のため何事かを学んでいた。
      


(つづく)



参考文献/サイト
https://www.tparents.org/Library/Unification/Books/Sm-Early/Chap05.htm
https://tragedyofthesixmarys.com/kim-baek-moon-talked-sex-with-god/
など




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追い詰められてゆく・/龍明小説2-13

『龍明小説2-12』からの続き



龍明小説2-13




 銀牧師のところに大口献金があったらしいと噂話を聞く度に、龍明はうらやましくてヨダレが出そうだった。

 もっとも銀自身は相変わらず質素な信仰生活で、建物や運営にも何も変化はなかった。

(なんでやねん、それだけ資金があれば、おれならもっと手広く活動して、教えを拡めてみせるんだがなあ!)

 教会や修道院の活動にもっと時間を使って投入したい龍明は、普通の会社勤めにストレスを感じるようになっていた。


 幸いにして妻のサンキルの実家は裕福だ。
 そこで義実家の崔家に今後の活動や生活の援助を打診してみたが、あっけなく断られてしまった。義母はもともとこの結婚に反対だったし、義兄たちも不満をもらした。

「見合いの席であれだけ調子のいいことを言っておきながらなんだ。妻や産まれてくる子をどうするつもりだ。サンキルは泣いてるぞ。無責任にも程がある」
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お笑い修道女軍団 神の妻を語る/龍明小説2-14

『龍明小説2-13』からの続き



龍明小説2-14





 きょうも修道院の渡り廊下の隅っこで、女たちが数人、井戸端会議をしている。誰か訪ねてきた者でもいるのか、うわさ話に花を咲かせているようだ。

 庭を掃いていた龍明は、
(まさかサンキルが来ているのではあるまいな?)
 木の陰に隠れ、チラ見しながら聞き耳を立てた。

 妻の姿はなく、一安心した時、不思議な言葉が耳に飛び込んできた。

 
「え、神の夫人?」
「そ、またの名をエホバの妻」
「からの大聖母?私も聞いたことあるわ」
「ヘェ〜 平壌にはそんな人がいるの」
「さすが東洋のエルサレムだねえ」
「平壌じゃそこらじゅうに教会ができてるらしいわね」
「なんでもその女、夢で神さまとセックスしてるって言ってえ」
「うわー」
「それで、あたしはエホバ神の妻でございってわけなのよ」
「キャー」
「自分ではっきりそう言ってるらしいわよ」
「それって、言ったもん勝ちの大聖母?」
「うわー」
「そんなこんなで、神の清い血統を分けてあげる若い男弟子を絶賛募集中!なんだって」
「ヤだあ、そのエホバの妻って何歳くらいの人?」
「さあ、40、50か、60か、7」
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銀よ、俺を嫌うな。平壌への道/龍明小説2-15

『龍明小説2-14』からの続き




  龍明小説2-15




 それからしばらく経った頃、やはり女修道者たちの井戸端会議で、銀牧師が一緒に平壌へ行く人を選抜しているとかいう話が出た。

(ナニ平壌だと?)

 龍明はもっと詳しく知りたかったが、いつものように木蔭で盗み聞きしている身。ノコノコ出て行って質問でもした日にはどんな目に合うか分かったものではない。


 ほどなく集会時の連絡事項で詳細が分かった。

 銀牧師は来月平壌で系列グループの会合と伝道集会を開く予定とのこと。
 以南からの参加者候補としてめぼしい信者に声掛けして調整中だが、それ以外でも参加を希望する者がいれば、後で個人的に申し出てほしい、ということだった。


 その節、平壌へ行くには、北緯38度の境界線を北へ超えていかなくてはならない。

 日本の総督府が撤退してからの朝鮮半島は、戦勝国の連合軍が入り、南半分がアメリカ軍、北半分がソビエト連邦軍による分割占領統治が行われていた。
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曇ってない 銀院長は知っていた!/龍明小説2-16

『龍明小説2-15』からの続き


   龍明小説2-16




「それに、」
 銀は言いかけて口よどんだ。

 修道生の中にごく少数だが龍明の子分のような存在ができて、それが他の者たちと修道生活で齟齬をきたしているとの報告を受けている。

 また女性修道者か信者の誰かと性的関係を持っているらしいとの疑念や苦情も持ち込まれていた。

 正直この青年にはこれ以上深入りして欲しくないという気持ちだった。

「まあ、きみのエネルギーには感服するが、平壌の件はそういうことにしてくれたまえ」

 銀はそれだけ言うと話を終わりにしたい様子を見せた。

 啓示の際に現れたイエス様の前で約束した、成約時代の新しい神学体系の執筆に着手していた彼は、霊的探究と瞑想、祈祷に集中してそれ以外の雑音には惑わされたくないのだろう。
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銀のやつ偽善者め。孤独寂寞の道/龍明小説2-17


『龍明小説2-16』からの続き


   龍明小説2-17




 龍明は憤然と院長室を出て来た。

(チェッ 偉そうに調子いいことこきやがって 銀のやつ 偽善者め 
 こちとら既成教会がよけりゃ とっくにそっちに行っとるわ

 なんだと? 改革が必要なのは既成教会の方じゃないか
 むしろお前が行け ヨッ ぺっぺ

 なにが原理だ 原則だ あー ブルっときた 気色わるッ
 コンチクショ〜〜〜ッ)
 心の中で声が裏返った。

 その夜は何度もトイレに駆け込んだ。

 人に上に立たれ指図されるのが大っ嫌いな性分で、なにか偉そうなことなど言われた日には体がそれを受け付けず、消化不良を起こして腹が下ってしまう体質だ。
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へびの知恵で平壌に居座る/龍明小説2-18


『龍明小説2-17』からの続き



   龍明小説2-18




 体験から学んで、龍明は計画を練った。

 ーーキリスト教の信仰を中心として救国救世の熱意を匂わせながら、最初はうんと下手(したで)に出て侍り、時を待つのだ。

 しもべのように洗濯でも何でもしてやるさ。
 イエス・キリストだって、弟子たちの前に跪いて彼らの足を洗ったというではないか。

 それで相手が態度を軟化させ隙を見せたら、その時はグッと踏み込んで、ガッとアプローチする。

 エホバの妻から体礼の儀式を勝ち取ったら、霊体交換で神の霊が入りメシア誕生となる。

 エホバの夫人は俺にメシアの権能を認め、再臨の主として証し、俺に侍らなければならない。

 うん、それでいこう。これが天の復帰のプログラムだ。
 龍明はやっといつものように短く深い眠りに入っていった。



 1946年6月5日、銀牧師が北行きの列車に乗る予定の日、龍明はリュックサックにいくらかの荷物をつめて、米を買いに北朝鮮に行くと妻サンキルに告げた。

「心配するなよ、2週間ほど留守にするだけだから」
と彼は言った。
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物悲しい心象風景を見据えよ・二巻の終わり/龍明小説2-19


『龍明小説2-18』からの続き




  龍明小説2-19
 



 龍明が家を出て、1週間が経ち、10日が過ぎ、ゆうに半月を越した。

 待てど暮らせど帰らない夫。
 ーー2週間で帰ると言ったのに‥

 不安を募らせたサンキルは、彼を探しに行こうと赤ん坊をおぶって何度も北行きの列車に乗ったが、いつも国境で止められてしまった。

 ついには当局に疑われ、38°線で赤ん坊を連れたまま1週間拘束される事態まで起こり、越境は諦めざるを得なかった。


 しばらくは夫が勤めていた会社から給料が出ていたが、それも3ヶ月で止まった。

 実家の崔家からは龍明憎しで何の援助もなかった。

 生活苦に陥ったサンキルは、市場の果物売場などで働いて幼い息子を育てるしかなかった。

 彼女が再び夫の姿を見るのはそれから6年後のことになるが、それは幸福な再会とはならなかった。



 朴ウリョンは、その日以来一度も龍明に会っていない。46年に彼を見たのが最後となった。

 彼女はその後もずっと銀白文を慕い、その教団に属していた。


 銀白文は3冊の著書を完成させ、新約聖書の黙示録にある子羊の婚宴(キリストと処女の結婚式)を挙げて、地味な信仰生活を全うした。

 銀が1990年に73歳で逝去した後も、ウリョンは来たるべきメシア銀師を信じ続け、再び銀白文キリストが戻って来るのを切に待ち望んでいる。

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